杉山美術館とリャド
知名度の低さにもかかわらず、素晴らしい作品を収蔵している個人美術館、杉山美術館へアートツアーで行ってきました。
あまりよくない聖地でお馴染み、新小岩の商店街を抜けた先の住宅地にある杉山美術館。
見た目は完全に一軒家。
93年に47歳で亡くなったスペイン画家J・トレンツ・リャドをメインに展示する小さな美術館でした。館長はとても気さくな方で、どんな質問にも答えてくださる素晴らしい方でした。
一階は仕事場、二階へ上がります。
お邪魔すると、そこには風景画数点と肖像画一点が!
モネに雰囲気は似ているが、ハッキリとした色、荒々しくも美しい風景画の数々!元々の趣味もあるが、正直モネより断然好み。
そしてマスターピース【トリニダッド・カンピン嬢】
長い間目が離せなかった。スペインのモナリザか…!
かなり速筆らしく、風景画は1.2時間、肖像画は5.6時間で描くらしい。
でも1時間で大体完成し、残りの時間は化粧と言われるくらい、細かな顔や肌、さらには内部の血管に至るまで手を加え、とにかく美しい顔を際立たせることに拘るそうだ。
黒地、顔以外の部分、手や衣服などは結構荒々しいタッチのまま。
全ては際立たせるため、美しい顔を。
そして館長もライティングに拘っていて、全ては彼女のため。
これは素晴らしい作品だった。光の速さでポストカードとフォトを買って、自宅に飾ってます。
元々所蔵していた画廊は売るつもりは無かったそうだけど、館長が恋焦がれ通いつめて、様々な要因も味方し、なんと8年越しに手に入れたらしい。そりゃあ嬉しかっただろうなあ、語る館長の顔、とても良い顔されてました。
しかし本当に素晴らしい名画だと思います。
リャドは日本で知られたのがラッセンと同時期であったり、版画販売等々、諸々の理由からあまり正当な評価を受けていないそうだ。
でも何年何十年先かはわからないけど、今後間違いなく再評価が進む画家だと確信しているし、その時には多くの未だ生まれていない美術ファンが、この名画が日本にあることを感謝する日がくることを信じています。
新小岩の近くに来たら、是非行ってみてください。
カンピン嬢の虜になること請け合いです!
かわいい浮世絵 おかしな浮世絵
太田記念美術館のかわいい浮世絵 おかしな浮世絵へ行ってきました。
ようやく見られた虎子石!太田記念美術館のマスコットでもあります。
女性は驚きながらも、よく見るとかわいいことに気付いたような顔。
男性二人はビビリすぎでしょ!
確かに不気味ではあるけど、かわいいじゃない。
虎子石は大磯にあるらしいけど、本来は普通の石だから、虎と合体させる発想は芳員ならではらしい。
しかし歌川芳員ってかわいい作品残すなあ。
これも良かった。
化かして遊ぶ狐。
どや?って感じの狐と、ポカーンと口半開きで直る農民。
トゲトゲな松の笠と腰蓑に、刀に見立てた竹を装備して気取り顔。
農民も竹を差して武士と思い込まされている。
なんともかわいい笑
鯰舞しの洒落
アイコンに使うぐらいだから、鯰絵が大好きなんです。おそらく大地震で儲けた奴らが、もっと俺たちのために地震起こせよ、と猿回しのように操る図だろうと思います。哀れではあるけど、これまたかわいい。また鯰絵だけの展覧会どこかでやらないかな。
国芳師匠のトウモロコシ歌舞伎
長い髪を振り回す石橋物(しゃっきょうもの)の見せ場!
トウモロコシのヒゲを見て閃いたのだろうか。
後ろの囃子も野菜で面白い。
擬人化に定評のある国芳、さすが!
すずめの仮宿
遊女の吉原を描くことは禁止されていたので、擬人化という抜け道を使った国芳師匠。
仮宿とは、吉原炎上後に一般の住居で仮営業していた遊郭だそうな。
擬人化とはいえ、服装や小物など、当時の空気感が伝わってくるよう…。
左下の出前なんか凄い膳!
大盤振舞いの語源という説もあるらしい。
この作品、なんでもあまりに面白すぎて、検印押す役だった渡辺何某が、ノリで着物の柄に見えるように【渡】の印を押してしまって、それが不真面目だということで遠山の金さんがキレて改め役を解任させられたらしい。
確かに三分割のそれぞれに押してありました。
もし行かれたら見つけてみてください。
太田記念美術館は一か月で企画展変わるので、急いで!
来月2月は小原古邨展、これまた楽しみ!
今回も一点ありました。
仲睦まじい雞の夫婦。
安らかな雌と、どこか頼り甲斐のある雄。
こんな夫婦憧れるなァ。
カタストロフと美術のちから展
森美術館のカタストロフと美術のちから展へ行ってきた。
阪神淡路大震災、同時多発テロ、東日本大震災をペースにしたアート作品の数々。
考えさせられました。
特に好きな作品数点
平川恒太【ブラックカラータイマー】
福島第一原子力発電所で従事した作業員の肖像画
カチッカチッと時を刻む音が聞こえてくる。
被曝による死へのカウントダウンに聞こえる。まさにブラックカラータイマー。
池田学【予兆】
細密な描写力と凄まじい情報量もさることながら、
描かれたのが2008年ということに驚いた。
宮島達男【時の海 –東北–】
デジタルタイマーでお馴染み、直島の角屋で感動して大ファンになった宮島さんの作品。
それぞれが異なるカウントを刻んでいて、ひとりひとりの命の進み具合を感じさせる。やけに早いカウントを刻むもの、ゆっくり刻むもの。
そんな中で気になったのは、無表示のまま佇むだけの一つのカウンター。
死を感じずにはいられない。
もう動くことはないのか、もしかしたら故障か?と思いつつ気になってずっと眺めていると、かなりの時間をかけて[1]が刻まれた!
多くの命が失われたあの震災の日、しかし同時に新たな命が誕生した日でもあることを感じました。
まさに生と死の作品です。今回の展示ではダントツで好きです。
タイマーの設定は小学生が行なったそうで、先述のタイマーを設定した子に話を聞いてみたいと思った。もしかしたら偶然かもしれないけど、間違いなく一人の人間には感じるものがあったんです。
クラウドファンディングに参加しようと思います。
QRコードがらしくてカッコイイ!
宮島達男さんは著書も面白いです。
カタストロフ展は1/20まで、もうすぐ終わっちゃいますので駆け込みましょう。
土田泰子展
平塚市美術館で開催中
土田泰子展 導~ Whereʼ s a will,thereʼ s a way
へ行ってきました。
そういえば昔、洗濯バサミやクリップをくっつけて戦闘機やオブジェを作ったなあ…
そんな幼少期を思い出す展示が多かったです。
もちろんクオリティが違いすぎますが!
【nest of sixth sense】
真鍮のクリップで表現された巣
金属で硬いはずなのに、フワフワ感がそこはかとなく感じられる。好きだ!
【star line】
分度器!表示の部分が重なると、ここまで黒を形成するんだな〜!誰でも使ってた分度器、でも数回程度しか使わないであろう分度器が、こんなにゾワゾワする不穏な作品に生まれ変わるとは…。
【man ma mia】
ミルキーはママの味
不二家協力の元、制作された作品だそうで!
部分的にイエローの包み紙も使われているのがアクセントになって良いなあ。
土田泰子さん、御本人はとても美人で、アートシーン出演時のファッションもバルマンっぽいレザー着ててカッコ良かったんだけど、ツイッター見に行ったら不二家のアカウントRTしまくっててギャップにやられてしまった。
【超BLEND ~push beyond one's limit~】
メインビジュアルにもなっているオディール!
万いってそうな数のマドラーで作られている!
全ての作品に言えるけど、発想が凄いというか、よく作ろうと思えるなあ。それが芸術家なのだろうか。
一番気に入ったのはこの作品
【女義】
黒のビジネスハイヒールかと思われる。お洒落や自分、大切な人のためならいいけど、職場でも負担の大きいハイヒールを履かねばならない風潮、化粧もだけど、それら男社会の都合によって作られた女性の義務に対するアンチテーゼを感じられる作品。
連なり、鏡の奥にも続く女義の螺旋。
今後もそういった風潮は無くならないかもしれないけど、作品手前に連なりが少々崩れかかる部分があり、新しい時代の突破口のような、そういった女性の義務から解放されてほしい、そんな希望も垣間見える。作者の想いが伝わってくるような素晴らしい作品だった。
土田泰子展、面白かったです!そして無料というのに驚きました。是非東京でも個展やってほしい。
今後も楽しみな作家さんです。
平塚市美術館は、平塚駅という微妙に首都圏から離れているし、駅からも15分ほど歩かなきゃならない立地だけど、去年の深堀隆介さんの個展など、面白い企画が時々あるので印象深い美術館です。
三沢厚彦さんのユニコーンにも会えます!
オススメです!